晴れ。

 というわけで「冷静と情熱のあいだ―Blu」を読みました。辻 仁成による男バージョンです。有名過ぎるこの本、僕はなんか敬遠していて、今まで読む機会はありませんでした。多分日本にいたら読むことはなかったでしょう。縁って不思議だ。

 まあそんなわけで、今更書かなくてもいいぐらい有名だとは思いますが、「冷静と情熱のあいだ」は、辻仁成と江國香織が「一緒に小説作ろうや!」となって書かれた作品で、主人公は、色々あって別れて、数年たったカップル。辻仁成による男主人公の「Blu」と、江國香織による女主人公の「Rosso」に本自体が別れており、それぞれの一人称で、男側の気持ちと女側の気持ちが描かれています。非常に面白い企画。

 過去に縛られ過ぎている男、情熱に生きたが為に傷ついて、冷静で生きようとしている男、しかし依然渦巻く情熱、結果人を、自分を傷つけていくことになる。その先にあるものは。みたいな感じです。僕は主人公が自分とオーバーラップして、かなりのめり込んでしまいました。

 やはり傷つくもんなんですよ、人生なんて。公園できゃっきゃとはしゃいでいる少年がいる。そりゃあたまにはこけるんです。血ぃ出る、泣く。でも傷はかさぶたになって癒えていく、涙は乾き、少年を強くしていく。全ては思い出になっていく。それともクッションを敷き詰めた安全な部屋の中で一生暮らすんですか。

 思うんですが、一度きりの人生、思い切り笑って暮らしたければ、やはり思い切り泣くことも覚悟しなくちゃいけないんですよ。つるりとしたハートはプリンのようで生クリームのようで、大変に傷つきやすかったりします。みんな最初はそれを知らず、ガンガンぶつかり合って、傷つけ合って、ぼろぼろになる。

 でもハートはプリンじゃない、生クリームでもない。ハートだってヒトという生物の一部であって、「自己再生能力」というやつを持っている。それは「忘却」であったり、「成長」であったり、「あきらめ」であったりします。

 ともかくそうやってだんだんだんだん癒えてくる訳です。そうして傷が癒えた時どうなるんでしょう。心の傷は骨折に似ていて、治った後も鈍い痛みは続きます。そんな古傷が痛んだ時、僕達はつい、骨折した時、傷ついたその時の痛さを思い出しちゃうんですね。で、プリンのハートをガードしちゃうんですね。

 駄目なんですそれは。骨折ってやつは、「リハビリ」しないと鈍い痛みはいつまでも続くんです。僕達が人との関係を恐れて「こっから先には来ないでね」ってやってる限り、僕達の心はちくちくと痛み続け、一生そんな鈍痛と共に、そして孤独に生きていかなくちゃいけないことになるんです。

 例えばそれが恋愛だったとして、ハートブレイク君が新しい彼女を作ったとしても、もしその新彼女に心を開かず、いつ傷つけられるのかとビクビクし、ほんとの自分を隠して、ハートをガードして付き合っていたら、それは彼女がいないより寂しいと思います。例えばどれだけ一緒にいても、どれだけ体をくっつけていても、それは逆に「それでも心はくっつかない」という再確認になっちゃうんです。独りぼっちの再確認。

 だから必要なのはリハビリであり、再び怪我するのを恐れないことなんです。心を再びノーガードにして、ぶつかり合わないと古傷は克服できないんです。ノーガードにして心が通った時、上の例のハートブレイク君は、体をくっつけることにより今度は「心もくっついてる・・・よな?」と確認できるわけです。ノット独りぼっちを確認。

 そうしていつか、ぴたっ!!!!!!!とくる相手とめぐり合ったらいいんです。どんなに心地がいいか。どんなに心地がいいんだろう。プリンでいこうよ、生クリームでいこうよ。

 で、楽しい人生というイチゴ乗せて、プリンアラモードになろうよ。

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